関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家たち。今回は、空き壁をアートに変えて、広告媒体にした上でまちの活性化を図っている、WALL SHARE株式会社の代表取締役、川添さんにお話を伺いました。楽しそうに生き生きとお話をしてくださる姿が印象的でした。
レポート:雑喉日奈子
川添孝信(かわぞえ たかのぶ)代表取締役、略経
1990年生まれ。兵庫県出身。
体育大学卒業後、フォルクスワーゲンの新車営業に従事。働きながら経営者や起業家と交流し、起業家に憧れます。
その後クラウドワークスや共同創業での起業を経験し、10代の頃から好きだった、海外のようなストリートアートを日本に作るプレイヤーになりたいと思い、更なる拡大を目指してWALL SHAREを起業しました。
雑喉:はじめに事業概要について、教えていただけますか?
川添:空き壁をアートで活用し、まちを彩りながら新たなプロモーションを提供しています。関わるプレイヤーは3者で、空き壁を有効活用したい壁主から空き壁を提供いただき、アーティストが広告主の意図を汲んだアート作品を手掛けます。アーティストは報酬を獲得しながら公の場で作品をアピール可能です。広告主はアート活用したプロモーションが実現でき、SNSでシェア・拡散されることを期待できます。
雑喉:空き壁にアートを描いてほしいという依頼があるのですか?
川添:落書きとどう違うか?などのネガティブな印象は拭いきれませんが、「この空き壁を有効活用できますか?」という感じで依頼されることがあります。オーナーさんや不動産会社に繋がって、空いている土地を貸す感覚で、空いている壁を貸して収入を得るスキームや殺風景なビルがアートになってまちの景観をよくしながら、不動産の向上になる可能性などを提案させていただいています。
雑喉:アーティストさんはご自身で集められたのですか?
川添:はい、一人一人声をかけました。ただ「囲うや集める」というマインドはなくて、僕たちの組織に入っているというスタンスではありません。10代の頃からストリートアートが好きだったから様々なアーティストを知っていて「あの頃ファンだった人と繋がれている」という感覚です。
雑喉:昔からアートには、ご興味があったのですね。現在、WALL SHARE社として、どういった広告を作られていますか?
川添:最近の事例ですと、合同会社Endianが展開するリラクゼーションドリンク『CHILL OUT』とコラボレーションをしました。渋谷エリアでコロナ禍における飲食店などの活性化プロジェクトとして、シャッターを二枚活用して、『CHILL OUT』をモチーフにアート描きました。ただ商品が、どかっ、と書くだけではなく、アーティストの感性と企業の伝えたいメッセージをコラボレーションした「アート」という形でまちに共存し、人々が楽しめる作品を作っていきたいです。制作過程を見ることができるのも魅力の一つです。
雑喉:オフィスアートの仕事も受けいるそうですが、屋内でもミューラルアートを作成しようと思ったきっかけはありますか?
川添:壁画という手段を考慮すると、屋内・屋外のどちらにおいても制作が可能です。ビジネスの場においてのアートは関わり深いものがあるべきということと、オフィスに大胆なインパクトのあるアートがあればポジティブな流れが生まれると思います。現に既に活躍をしているオフィスアート関連の企業さんは数社いますよね。ただやはり僕たちはまちづくりという観点も重視していて、ミューラル(外壁)に拘っていきたいです。
雑喉:依頼されて作品を作るときに大切にしていることはありますか?
川添:アーティストの感性やスタイルを活かした作品になるよう、交渉などは全てWALL SHAREのチームメンバーが行なっています。依頼主とディスカッションをする中で定めたキーワードやテーマ、想いをアーティストに共有します。そしてアーティストの解釈を交えながら進めるすることで、アートのカルチャーにも沿ったカッコいい作品になると思っています。妥協する部分や、やりたいことを一緒に探しにいく、ということを大切にしています。
雑喉:アーティストさんにとっても安心ですね。WALL SHARE社の強みは何ですか?
川添:アートというカルチャーを大切にしていることと、アーティストへのリスペクトがあることです。各アーティストが培ってきた経験やスタイルを活かすことが一番良い作品に繋がると思っています。アーティストがもつエネルギーやスタイルを私たちは把握(まだまだですが)していて、そのポジティブをクライアントさんにもお伝えをしています。
雑喉:起業してよかったなと思う瞬間はありますか?
川添:アートに興味がなかった人が制作途中に声をかけてくれたり、写真を撮って行ったりしてくれたときは嬉しいです。その対象は老若男女、国籍問わず様々な人です。アートは、美術館などへ行かないとなかなか見ることができないものでしたが、まちに描くことのよって、今までアートに触れたことがなかった方へ、アートに触れるきっかけ・機会を与えることができるのも嬉しいですね。
雑喉:起業するにあたって苦労したことは何ですか?
川添:アーティストさんや壁主さんからはウェルカムな感じの人が多かったです。企業さんがプロモーションにおいて、また行政がまちづくりにおいて大胆に壁に絵を描くという、一見ネガティブな要素とも思われることを受け入れてもらうのに苦労をしました。今も同様です。
雑喉:ありがとうございます。最後に、今後の目標を教えていただきたいです。
川添:「死ぬまで絵を増やし続ける」です!直近で言うと、5年後には日本の街に500個アートを増やしたいです。世界も目指したいです。日本のようにアートにあまり寛容ではない国はあると思うので、そういった国にもアートを増やしていけたら良いなと思っています。
この取材で、アートが心の底から好きだという気持ち、老若男女、国籍問わずアートに触れて欲しいという熱い思いがとても伝わってきました。
SNSを普段から活用する私としては、SNS映えをする派手で、個性的なストリートアートに興味が湧き、これからのWALL SHARE社の活躍を期待するばかりです。
街中でWALL SHARE社の作品がたくさん見られることを楽しみにしています。
(学生ボランティア・雑喉)
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