関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家たち。今回は、パートナーとの性生活をサポートするサービスを提供する、株式会社Unwindの代表取締役 萩原 佳音(はぎわら かのん)氏にお話を伺いました。
取材・レポート:西山 裕子(生態会事務局長) 大野 陽菜(ライター)
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代表取締役 萩原 佳音氏 略歴:1995年、神戸市生まれ。神戸女学院大学卒業後、オンラインで男女のマッチング事業などを行うIT企業に新卒入社し、マーケターとして2年間勤務。退職後、独立しフリーランスとしてライター、カウンセラーとして活動。2021年、株式会社Unwindを設立し、株式会社taliki主催の社会起業家向けアクセラレーションプログラムCOM-PJや兵庫県・神戸市主催のプログラムSDGs challengeに採択。COM-PJでは最優秀賞を獲得。同年、認定ラブライフカウンセラー®︎の資格を取得。 2024年、総務省ICTスタートアッププログラム採択。
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精神的な性生活の悩みにアプローチ
生態会事務局 西山(以下、西山):本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
まずは、事業の概要を教えていただけますか?
代表取締役 萩原 佳音氏 (以下、萩原氏):私たちは、個人やカップルが自身の性的嗜好やパートナーシップの傾向を理解し、健康的な性生活をサポートするセクシャルウェルネスアプリ「tawagram(タワグラム)」 を提供しています。
私はこれまでに、ラブライフカウンセラーとして、性生活のカウンセリングを行ってきました。その中で、カップルの性生活においては、悩みを感じていても「嫌われたくないからNOと言えない」という課題があることが分かりました。さらに、この課題を深堀りしていくと、特に日本人は自己肯定感や自尊心が低い傾向にあり、性生活の悩みを打ち明けにくいのではないかと考えました。
そこで、「tawagram」では、お互いに傷つけることなく性に関する希望を伝えるための話し合いのきっかけを作り、パートナーとの性生活に悩みを抱えるユーザーの課題を解決します。
打ち明けにくい性の悩みを伝えるきっかけを作る
西山:キャラクターがとても可愛いですね。サービスの詳細を教えて下さい。
萩原氏:ありがとうございます!独自に開発した約50問の質問に基づく診断を、13種類の生き物で例えてキャッチーに表現しました。今、流行っている性格診断を参考にしました。
ユーザーは選択式の質問に答えることで、自分の性生活の傾向を分析することができます。
欧米では、カップルカウンセリングや性生活について考える機会が日本に比べて多いですが、日本ではそれが広がるのが10年後になると言われています。そのため、私はカウンセリングの中で行うような、「したいこと」と「したくないこと」の診断をwebアプリの中で簡単にできると広がりやすいのではないかと考えました。
さらに、パートナーとの診断結果を組み合わせることで、2人の相性や起こりうるトラブル、その対策を知ることができます。また、専門家へのカウンセリング依頼や、適切なグッズや情報のレコメンド機能も実装しています。
また、ライフステージによって価値観が変わっていくので、定期的に診断いただき、二人の関係を見直してもらうことも重要だと考えています。
ライター大野(以下、大野):なるほど。日本人に多い傾向がある自己肯定感や自尊心の低さに課題の原因を見出し、アプローチしているのですね。なぜ、このサービスのアイデアに至ったのですか?
萩原氏:実は私自身、学生時代から性教育に馴染みがありませんでした。付き合っていた人と別れたことがショックで、自分に価値がないと思った経験もあります。
そして大学生になったときに、友達と性について話すようになり、「相談して良いんだ」と思うと同時に、「その知識ってどこから得るのか?」と疑問に思いました。また、サークルでは男女のジェンダーギャップも感じていました。そこで、大学の研究としてこの疑問に取り組み、SNSで性についての発信も行い始めました。
大学卒業後は、オンラインで男女のマッチング事業などを行うIT企業に新卒入社し、マーケターとして2年間勤務しました。そこでもSNS発信を通して、学生から40〜50代まで幅広く相談があり、それぞれ自己肯定感が低いという課題を抱えていることに気付きました。
そして、「この課題を解決しなければ!」と考え、カウンセラーの資格を取り、株式会社Unwindを起業しました。
実は、これまでにカウンセリング以外にも、女性が手に取りやすい潤滑剤の開発なども行いました。しかし、販売を通して商品よりも、よりマインドに近い解決策が必要だと感じました。そして、2023年12月にクラウドファウンディングに成功し、「tawagram」の開発に至りました。
大野:そのような背景がおありだったのですね。マインド面で課題を抱えている方も多くいらっしゃると思うので、webアプリで簡単に診断できるというサービスは素晴らしいですね。
サービス拡大により、日本社会における性の価値観を変える
西山:ローンチ後、サービスの反応はいかがでしょうか?また今後、サービスをどのように展開されていく予定ですか?
萩原氏:2024年7月12日に、「tawagram β版」をリリースしました。10月末にはユーザー数が、16万人を突破しました。有り難いことに、広告費をかけずとも、SNS上の口コミで広がっています。そのうち約3%の方にカウンセリングなどの有料コンテンツをご利用いただいています。
今後のサービス展開としては、企業様向けのヘルスケアのデータ活用にも繋げていきたいと考えています。例えば、生活習慣や自己肯定感のデータを連携し、避妊や妊活などの課題解決に繋げたり、気温や気圧が性交痛に関わると言われることもあるため、研究を進めていきたいです。
大野:劇的なユーザー数の伸びに驚きました!
最後に、今後の展望をお聞かせいただけますか?
萩原氏:実は、カウンセリングによって変えることができる数は限られています。しかし、私は社会に大きなインパクトを与えられるサービスを目指していきたいです。
日本の社会を変える上で、インパクトの大きさは大事だと考えています。そのため、上場を目指し、セクシャルウェルネス(性の健康)が当たり前の社会を実現していきたいです。
西山:私自身もセクシャルウェルネスの市場の可能性と、課題解決の重要性について改めて感じました。このような画期的なサービスをぜひともより拡大していってほしいと思います。
今日はどうも、ありがとうございました!
取材を終えて:取材を通して、カップルの性生活の充実にはコミュニケーションが重要だとを感じました。萩原さんは、7年以上にわたるセクシャルウェルネス分野での経験を活かし、課題を的確に分析し、多様なアプローチでユーザーの問題解決に貢献されていると思います。このサービスにより、より多くの人が性生活をポジティブに捉え、行動に移せるようになり、充実と幸福を感じられる世界の実現に期待です。(ライター大野)
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