関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家たち。今回は、全国のアマチュアスポーツ試合をオンラインで観戦しサポートできる共感型動画サービス 「Plus」を提供する、株式会社THIRTY SIX(サーティーシックス)の代表取締役 中野 貴裕(なかの たかひろ)氏にお話を伺いました。
取材・レポート:垣端 たくみ(生態会事務局)、大野 陽菜(ライター)
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代表取締役社長 中野 貴裕氏 略歴:1972年生まれ、京都府出身。1995年立命館大学卒業。2019年大阪に株式会社オールアーツクリエイトを設立。2021年関西学生アメリカンフットボール連盟常任理事に就任。 2022年には分社化として株式会社THIRTY SIXを設立。
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生態会事務局 垣端(以下、垣端):本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
早速ですが、事業の概要を教えていただけますか?
代表取締役 中野 貴裕氏 (以下、中野氏):私たちは、全国のアマチュアスポーツ試合をオンラインで観戦しサポートできる共感型動画サービス 「Plus」 というサービスを提供しています。アマチュアスポーツチームの試合をリアルな会場に行けなくてもオンラインで観戦できるプラットフォームです。特に、地域で活動しているスポーツや文化団体に応援による元気と運営体制に特化したサポートの提供をしています。
垣端:なぜ、このサービスのアイデアに至ったのですか?
中野:部活動を含む多くスポーツチームはコロナ禍で入場料や会場での物販等の収益源が激減し、運営の危機に瀕しました。
私自身も、高校生から社会人まで
アメリカンフットボール選手としてプレーしており、大学時代には日本一を獲ることができました。引退後に、チームのコーチやアメリカンフットボール連盟常任理事として運営側に携わった際に初めて、スポーツチームの運営の課題感を感じました。
特にコロナ禍では、お客様を呼べなくなったことで収益源が激減しただけでなく、
選手の活躍が見られないようになってしまったことで、チームのマインドも意気消沈しているようでした。
一生懸命やっている選手が見てもらえない、応援してもらえない、リクルートが来ない、
といった胸が痛くなるような声を日々現場から聞いていました。
コロナ後でもその課題は尾を引いています。持続可能なチーム運営を実現するためには、誰でも簡単に使えるサポートシステムが必要不可欠であると気付き、このサービスの開発に至りました。
垣端:確かに、そのような課題を持っているチームは多そうですし、長年選手として現場でご活躍され、その後もチーム運営に携わられていた中野さんだからこそ気付けた課題感ですね。
ライター大野(以下、大野):頑張っている選手たちに声援が届かないことは、チームにおいて経済的にも精神的にも、とても厳しいと感じます。
継続的にファンと収益の獲得ができる世界観へ
垣端:このサービスで、具体的に誰の課題を解決できるのですか?
中野:現在はこのサービスで、アマチュアスポーツ試合のオンライン観戦が可能になっています。実証実験も兼ねて、著名大学スポーツチームのEC運営やOB会費収集で一部マネタイズ中です。
将来的には無料プランでも選手への投げ銭や物販が可能になり、スポーツチームが持続的に収入源を獲得できるような仕組みを考えています。加えて、配信の他にも部費の回収や年間スケジュール管理などスポーツチーム運営に必要な事務局代行機能を含む、7つの機能を実装予定です。
システムはコロナ禍で中国でのオフショア開発が進んでいましたが、臨機応変にサービスを改善するために国内開発に切り替えました。
試合等での瞬間的な機会に限定されず、継続的にファンと収益の獲得ができる世界観を目指しています。
垣端:他に解決できるサービスは、これまでなかったのでしょうか?
中野:他のサービスを色々組み合わせればできるかもしれませんが、各サービスの毎月の利用料金の関係で運用は厳しいと考えられます。また、システム操作が属人的で、継続的ではないこともあります。それを、私たちはまとめてひとつのサービスで手軽に実現したいと考えています。
分野を超えて、誰でも簡単に操作できるシステムへ
中野:スポーツ界だけでなく、運営における同じような課題感はアーティストやライブハウスにもあります。
今後はそのように分野を超えて、ファンと繋がり、マネタイズができるプラットフォームとして、持続可能な運営支援を実現したいと思います。
また、このサービスでは配信も誰でも簡単に操作できるように、直感的にわかりやすいデザインや機能であることを大事にしています。
大野:確かに、ライブハウスなどでも需要がありそうですね。システム操作が属人的であることも運営における課題であると仰っていたので、誰にでもわかりやすいデザインであることは、ユーザーにとってとても有り難いと思います。
“共感”から社会的なインパクトを
垣端:今後の展望を、お聞かせいただけますか?
中野:スポーツ観戦の枠を超えて、持続可能なチーム運営をサポートするサービスを拡大し、最終的にはIPOを目指しています。
そのためには、私たちだけでなく産学連携することも欠かせないと考えています。なので、拠点となるオフィスの場所にはこの「立命館大学BKCインキュベータ」を選びました。
コロナ禍では、「不要不急」と言われ、夢を諦めざるを得なかった人も大勢いたと思いますが、私はスポーツ、音楽、芸術はこの社会に必須だと考えています。
スポーツ選手やアーティストが与える社会的なインパクトはとても大きいでしょう。
私たちのサービスによって、“共感”を多くの人に届け、認めてもらえる世界にしたいと思います。
垣端:コロナ禍の原体験を伺っていると、私たちの知らない間に大変な思いをされた方々がたくさんいらっしゃるのだなと改めて感じました。画期的なサービスによって、スポーツ、音楽、芸術の感動を今後も社会にもたらしてほしいと思います。
今日はどうも、ありがとうございました!
取材を終えて:取材を通して、地方の団体やアマチュア選手にとってのチーム運営の課題について伺い、アメリカンフットボールの選手として長年現場でプレーをされていた中野さんだからこそ、解決したいという強い想いが、大変心に刺さりました。このサービスによって、普段は注目されにくいチームにもファンの支援が届き、持続可能なチーム運営を実現してほしいと思います。(ライター大野)
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