生態会が注目する、関西のスタートアップ起業家。今回は、低刺激で肌トラブルを抱えている人も安心して使用できると評判、リピーターも多い手作り石けんの製造・販売をする茶凡屋株式会社の代表取締役 勝山 信彦(かつやま のぶひこ)さんにお話を伺いました。
新規事業として、電気浸透現象を利用した革新的鹸化技術を用い、液体を手軽に還元水に変えられる装置を開発中。技術力を持ち合わせた、スタートアップです。
取材・レポート:西山 裕子(生態会事務局長)、越智のりこ(生態会ライター)
勝山 信彦 代表取締役 略歴
1958年生まれ、大阪府出身。
大学卒業後、株式会社ワイエムシィや株式会社インタクトにて、HPLCカラム(高速液体クロマトグラフィー:High Performance Liquid Chromatography。定性・定量分析手法のひとつ)の研究開発や品質管理に携わる。
会社員時代に旅行で訪れた沖縄に魅了され、「自分も人を癒すことができる文化を伝えていきたい」と思い、前田京子著の「お風呂の愉しみ」という本との出会いから副業として石けんづくりを始める。2001年9月より”茶凡屋”を開業、2018年に茶凡屋株式会社を設立。
生態会ライター 越智(以下、越智):本日は、お時間いただきありがとうございます。まずは、事業概要について教えていただけますか。
茶凡屋株式会社 勝山さん(以下、勝山):マカデミアナッツオイルや、オリーブオイル、植物性のスクワラン、豊かな香りの天然香料など厳選した原材料を使用した手作り石けんの製造・販売をしています。会社員時代に培った分析技術を基に作った石けんは、化粧落とし(クレンジング)と洗顔をまかなうことができます。
特に、肌トラブルを抱えていらっしゃるお客様に気に入っていただき、リピーターの方も多いです。
越智:茶凡屋さんの石鹸は、クレンジングと洗顔の2つの役目を果たし、かつ、お肌のコンディションが改善すると評判だそうですが、元々そのように作ろうと思われてのことだったのですか?
勝山:いえ、正直なところ、W洗顔が不要な点は狙って作ったわけではないのです。ただ、肌への過剰な刺激がなく、無理なく自然と肌に馴染んでゆくような石鹸を作ることにおいて、狙い通りに開発を進められました。
元々化学メーカーで働いていたことや、分析機器の開発をしていたことが役に立っていると思います。石鹸で洗顔した後に使える化粧水や美容液があったら嬉しいというお客様の声を受けて、美容液も作り、そちらも高評価をいただいています。
生態会 西山(以下、西山):現在法人化されて3年目ですが、年商はどれくらいですか?
勝山:昨年は、1,200万円ほどでした。法人化した頃から、ようやく売れ始めました。営業をかけた東急ハンズで販売を始め、全国展開をしたのですが、売れ行きはよくありませんでした。そこで、東急ハンズの中でも化粧品の売上が日本一の、東急ハンズ名古屋店に販売を集中させました。
それでもなかなか売れなかったので撤退を考え、いつもたくさん購入してくださるある女性に、事業撤退の旨を伝えました。すると、「分かりました。最後に1回だけ私にチャンスをください。私が売ります。」と申し出てくれて、販売を請け負ってくれたんです。彼女が名古屋店で定期的に実演販売も始めたら、みるみるうちに売上が伸び、今では弊社の石鹸が、洗顔石鹸の中でも名古屋店で1番売れています。
越智:救世主ですね!それだけ、こちらの石鹸を愛されているのですね。今後の展望などはありますか?
勝山: 今、石鹸製造技術のうち、還元水生成法の技術を用いて、還元飲料を簡単に作れるという装置を開発したので、商品化したいと検討しています。
酸化還元というのをお聞きになったことがある方もいらっしゃると思います。身体が錆びることが酸化なのです
が、錆びないためにどうするかと言ったら、還元力が必要なのです。それはアンチエイジングにもつながります。そういったことから、抗酸化力のある食べ物を出来るだけ摂取しましょうという呼びかけもあるのですが、毎日飲む飲料については実は気にされていません。
実は、私たちは酸化力のある飲料を結構飲んでいて、身体を錆びさせているんです。コロナ禍で、免疫力を上げることの重要性が、以前よりも着目されるようになりました。
免疫力を上げる食品や飲料を摂取する方は、多くなっていると思います。還元水は売っていますが、水ばかり毎日飲むのはしんどいですよね。そこで、普段自分が飲んでいる飲料が、還元飲料に変わったら良いのではないかと思い、開発しました。今後、実証試験もし、商品化を実現したいと考えています。
取材を終えて
肌トラブルを抱える人にこそ受け入れられる石けんということに、希少性と技術力を感じました。商品化を検討されている還元飲料を作る装置は、もともと、1つの石鹸を作るのに3ヶ月要していたリードタイムを短縮できないかと、石鹸の鹸化反応を研究したことで発見された技術だそうです。この技術により、1日で作れるようになったと聞き、とても驚きました。
将来的には、石けんが無いような国にご自身が開発された石けんづくりの技術を持っていき、太陽光と現地の油・有用物を活用して石けんづくりをし、石けんを特産物にすることと衛生環境を整えることに貢献したいとも語ってくださいました。 (ライター 越智)
Comments