関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、Z世代向けの飲食・観光アプリ「sassy」を展開する株式会社RelyonTrip(リリオントリップ) 代表取締役 西村 彰仁さんにお話を伺いました。
取材・レポート:垣端たくみ(生態会事務局)
山本 脩太郎 (ライター)
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西村 彰仁(にしむら あきひと)さん 略歴:経営者一家に育ち、大学卒業後は日本生命保険に入社。人事・教育・システム開発等に従事し、2019年10月に退職。同年10月に株式会社RelyonTripを設立。自身や家族が旅行好きなことと、前職で全国の地域の方と交流しローカルの良さを肌で感じた経験から、飲食観光アプリ「sassy」を開発し2020年にリリース。
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行き先探しの「面倒くさい」を解消
生態会ライター 山本(以下、山本):本日はお時間をいただきありがとうございます!早速ですが、現在の事業内容について教えていただけますか?
RelyonTrip 西村氏(以下、西村):当社では飲食店や観光スポットを簡単に検索できるアプリ「sassy」を提供しています。「sassy」は行きたい場所を見つけたり、それをリストとしてまとめて共有することのできるアプリです。
まず、行きたい場所を見つけるときには、表示されたおすすめのスポットをマッチングアプリのように左右にスワイプするだけで自分の行きたい場所リストが自動的に作成されます。他にもテーマごとに複数のスポットがまとめられた「まとめマップ」や、今いる場所から近い順で行き先スポットを表示できる機能などがあります。
作成した行きたい場所リストは、友人に共有することができるので、お互いに行きたいと思う場所を簡単にリストとして表示できます。これらのリストは全てGoogleマップと連動しているので、ルート検索なども簡単にできます。
山本:とても便利なアプリですね。このサービスの提供に至ったきっかけなどはありますか?
西村:私自身旅行が好きで、Googleマップに行きたい場所をピン機能でたくさん刺していたんです。これが最初のきっかけで、そこから行きたい場所を探す際にどんなことに困っているかを考えると、今の若い方の行動特性が浮かび上がってきました。
Z世代と呼ばれる若い方の多くは、どこかへ出かけるときにInstagramを使って自分の行きたいスポットを検索しています。その一方で、Instagramは関係のないハッシュタグがついた画像が表示されたり、住所や営業時間は別途Googleなどの検索アプリで調べ直す必要があります。また「タイパ重視」と呼ばれるように、より早く手軽にさまざまなことをしたい、という特性があることから、簡単に行きたい場所を見つけられるアプリとして「sassy」をリリースしました。
「sassy」の社会的意義
山本:「sassy」の強みはありますか?
西村:大きく3つあると考えています。まず1つめはウェルビーイングとサステナビリティです。さまざまなライフイベントがあるなか、旅行の計画は幸福度が最も高い活動だと考えられています。「sassy」を通して行きたい場所を見つけ、それがきっかけでさまざまな場所を訪れれば、旅行に行かれる方はもちろん幸せになれますし、旅行先の地域活性にも繋がり持続可能な観光に貢献します。
2つめは独自データです。「sassy」でレコメンドされた行きたスポットは◯✕で評価をされます。当社ではそのデータを保有しているため、どのような写真がどのようなセグメントに評価されているのかが簡単にわかります。こうしたデータを活用して飲食店のSNS集客などに展開できると考えています。
3つめは若者発の地域活性です。「sassy」ではおすすめスポットをまとめた「まとめマップ」や、モデルコースを提案できる「デジタルしおり」を作成できます。
インフルエンサーのおすすめスポットや宿泊施設周辺の飲食店などをまとめることで、その地域の活性化につながります。研修の一環として近くのランチスポットをグループワークでまとめたり、地域に根ざしたスポーツチームのグラウンド近くのおすすめスポットをまとめたりと、さまざまな活用ができると考えています。
お客様ファーストのアプリ
山本:サービスを提供する中で大切にしていることはありますか?
西村:お客様ファーストを何よりも心がけています。当社では広告として行き先を掲載することはなく、信頼できる情報のみを提供していたり、社内では「ユーザー」という言葉を使わないように徹底していたりします。どうしても「ユーザー」という言葉には提供側と利用者側の上下関係が現れているような気がしていて、「お客様」や「ご利用いただいている方」のような言葉を使っています。
これは前職でお客様のことを第一に考えて仕事をさせていただいたことが今も活きていると感じています。
今後のマネタイズ
山本:「sassy」は無料で利用できるアプリですが、マネタイズはどのようにされているのでしょう?
西村:現在は特にマネタイズを行っていませんが、今後toBとtoC向けにそれぞれ3つずつのサービスを提供する予定です。
まずtoC向けにはマッチング機能とガイドブックDX機能、1FOR1を考えています。マッチング機能は、行きたい場所が同じ人同士を性別関係なくマッチングする機能で、「2人オフ会」のような用途を想定しています。
ガイドブックDX機能は、グルメ・旅行系のインフルエンサーの方のまとめマップを購入できる機能です。今後はガイドブックのような画一化されたまとめスポットではなく、自分に合ったプランを選べるような旅行プランが主流になると考えています。こうした旅行プランの提供には旅行業の免許が必要ですが、我々がその部分を担ってプラットフォーマーとなることで、インフルエンサーの方がおすすめのスポットを販売したり、オンラインサロンのような使い方ができると考えています。
最後に1FOR1はシンガポールやドバイで人気のサービスで、2人で飲食店を訪れると1人分のメインメニューが無料になる機能です。これはすでに近畿大学さまと似たような取り組みを進めており、非常に高評価をいただいています。
山本:どれも面白そうなサービスばかりですね。toB向けにはどのようなサービスを提供される予定ですか?
西村:toB向けにはご当地グルメのECとコンサルティング、まとめマップを考えています。
ご当地グルメのECは行きたい場所のレコメンドと同様に、写真をスワイプするだけでご当地の名産品などを購入できる機能です。コンサルティングは先程述べたように、当社が持っている写真などのクリエイティブに対する評価のデータを用いて、SNSでの集客などのコンサルティングを提供します。最後にまとめマップは、自治体や商業施設、イベントなどで近隣のおすすめスポットをまとめマップとして提供できるサービスです。
サービス利用者数拡大に向けて
垣端:サービスの利用者の方はどれくらいなのでしょう?
西村:今年に入ってご利用者の方が増え、先日14万名を突破しました。8割以上が10〜20代の方で、若い方を中心にご利用いただいています。App Storeのレビューも2,000件を超え、評価は4.7点と高い水準で推移しています。
山本:マーケティングとしてはどのような施策を打たれましたか?
西村:とにかく思いつくことはたくさんやりました。SNSやデジタル広告はもちろん、大学生への働きかけやビラ配り、SNSのダイレクトメッセージなど、デジタル・アナログを問わずできることはやってきました。その施策は意味がない、と思ってしまうようなこともやってみなければ結果はわかりません。やってみることで自身の経験として、次の施策を考える幅も広がりましたし、今後もあらゆるチャネルを使って、まずは認知を高めるための行動をしていくつもりです。
今後の展望
山本:今後のサービスの展開、展望について教えて下さい。
西村:現在プレシリーズA調達に向けて動き出しており、調達後は人材獲得やマーケティングを更に展開していきたいと考えています。
特に2025年は大阪・関西万博や沖縄の新テーマパークの開業、東京での世界陸上など多くの国際的なイベントが開催される大きなチャンスです。その後も大阪のIR(統合型リゾート)や神戸空港の国際化など、関西では多くの人流が見込まれており、まずは2025年までにしっかりとした基盤とお客様の拡大をしていきたいと考えています。
取材を終えて:「お客様第一」とおっしゃっていた代表取締役の西村さんの思想がそのまま体現されたような使いやすくワクワクするアプリでした。特にInstagramやTinder、食べログ、LINEなど、さまざまなアプリの良いポイントを集約したことで「sassy1つで完結できる便利さ」を実現し、タイパ重視のZ世代からの支持を得ているのだと感じました。2025年には大阪・関西万博や沖縄の新テーマパークが控えており、日本の観光産業を今後さらに盛り上げるサービスの1つとなるでしょう。(ライター:山本)
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