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  • 執筆者の写真大洞 静枝

手探りで果たした上場。社員の存在が一番の支えに:プロディライト

更新日:6月4日

クラウド電話サービスを展開する株式会社プロディライト。2008年にコールセンター専門の人材派遣会社として創業した後、自社のコールセンターを立ち上げ、自社開発した電話システムを外販したことをきっかけに、現在のクラウド電話サービスを構築した。


クラウド電話サービスは、従来の電話会社が提供する固定回線に頼らないクラウド上の電話回線で、スマホやパソコンから固定電話の機能が利用できるサービス。全通話録音や通話内容のテキスト化など業務効率に直結する機能のほか、通話音声から話し手の感情を分析し、元気度を表示するユニークな機能もカスタマイズできる。全て自社システムのため、ワンストップでスピーディーにサービスを提供できるのも同社の強みだ。


2023年には、東京証券取引所グロース市場に上場。オンリーワンのサービスを提供し続けるプロディライトの小南社長に、上場までの道のりについて伺った。

社員一丸で挑んだ上場=プロディライト提供

取材・レポート:西山裕子(生態会事務局長)、大洞 静枝(生態会事務局/ライター)


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株式会社プロディライト 代表取締役社長 小南秀光(こみなみ ひでみつ)氏

1973年大阪府生まれ。金融系企業でのサラリーマン経験を経て、2008年にコールセンター専門の人材派遣会社として、株式会社プロディライトを設立。


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目指すのは電話によるDX


生態会事務局 西山(以下、西山):本日はどうもありがとうございます。早速ですが、プロディライトの事業内容について教えていただけますか。


代表取締役社長 小南秀光氏(以下、小南氏):プロディライトは、クラウドを活用したオフィス向けの電話システムを提供しています。クラウドPBX「INNOVERA(イノベラ)」は、一般的な固定電話の回線とは異なり、インターネット回線を利用した電話システムです。場所を問わずに、固定電話の機能がスマホやパソコンで利用できます。コールセンターの運用やテレワークを導入している企業、シェアオフィスを利用しているスタートアップからのニーズがあります。


私たちが特にこだわっているのは音質です。同じIP電話でも、ルーターなどの機器を介してインターネットに接続している場合は、音の遅延などが起こりやすいです。一方、我々のサービスはフルクラウドシステムで、そのような問題をできるだけ軽減させる仕組みのため、安定した音質で会話することができます。


音声からオフィスの電話業務を効率化し、生産性を向上させる電話のDXにも取り組んでいます。例えば、従業員の負担を軽減するサービスがあります。迷惑電話など見知らぬ番号からの電話には一旦自動応答で対応し、オペレーターの応対が必要な電話は通話できるように振り分けます。また、音声通話をもとにした従業員のストレスチェックが可能な音声感情解析ソリューションや、全通話録音、通話内容のテキスト化を提供しています。

左奥:㈱東京証券取引所 上場推進部 田村満氏 左手前:西山 右:小南社長

生態会事務局兼ライター大洞(以下、大洞):競合他社と比べて、プロディライトの強みは何ですか。


小南氏: 私たちの強みは、カスタマイズ性とサポート体制にあります。コールセンターの運営から派生したサービスなので、エンジニアを社内で育て、システムを全て内製しています。お客様のニーズに応じた柔軟なシステム設計が可能であり、導入後のサポートも充実しています。自社システムで安定して運用できることも強みです。


上場企業として求められるのは透明性と信頼性


西山:2023年に東証グロースに上場されました。上場する際に苦労したことはありますか?


小南氏:最初の資金調達の段階から、多くの課題に直面しました。関東に比べて、関西での資金調達は難しく、ベンチャーキャピタルからは、「関西に力を入れていない」と言われたこともあります。関東は赤字を出してでも売り上げを増やしながら資金調達をするスタートアップが多いようですが、関西では、黒字にしてから次のステップに進むという考え方が根強いです。そのために、私たちもまず黒字化を目指すところから始めました。


上場通知書を受け取る小南社長=プロディライト提供

一番苦労したのは、予実管理の精度向上と内部統制の整備です。予実管理については、証券会社から「四半期ごとの予算と実績を開示する必要がある」と言われました。売上予測を細かく算出していく過程では、社員みんなで頭を悩ませました。しかし、これにより、経営陣が適切な意思決定を行うための基盤が整い、事業計画に向けた具体的なアクションを起こすことができました。


内部体制については、証券会社から外部役員や監査役が機能していないといった指摘があり、質問事項は数十ページにも及びました。オフィスを移転した理由を聞かれたり、社員が辞めた理由を聞かれたり。証券会社からの質問の意図も、最初はわかりませんでした。証券審査に何度か落ちる過程を経て、上場するということは、企業自体を丸裸にされても問題が見当たらない、潔白な企業であることが求められているのだと感じました。上場の過程で、社内の業務プロセスやガバナンス体制を徹底的に見直す必要がありましたが、結果的にはより緻密に経営管理ができるようになったと感じています。

上場セレモニーを会場の2階から見守る社員たち=プロディライト提供

西山:上場したメリット、デメリットについて教えてください。


小南氏:上場したメリットは、たくさんあります。信用力が上がり、今までは会うことも難しかった企業とタイアップができるようになりました。デメリットは、上場企業としての責任も大きくなり、株主への説明責任やコンプライアンスの徹底など、新たな課題に直面するようになったことです。社員には普段の生活の中でも、プロディライトの社員として意識してもらうようにしています。当然ですが、社員が信号無視や歩きタバコなどをしている企業は信用されません。会社の価値を下げるような行動をしないように、従業員の教育や意識改革を進めています。


また、上場後には株価の動向にも注意を払う必要があります。投資家の期待に応えるために、引き続き事業の成長に努めていきます。


上場前も上場後も変わらない企業文化は、「日々挑戦」


大洞:上場後も大切にされている企業文化はありますか?


小南氏:毎月 1 回の全体朝礼は、上場前から今も続けています。私に加え、他の人にも順番に話してもらいます。上場時は、なぜ上場するのかの意義や、自分の生活や家庭環境も話しました。当然ですが、自分一人ではできないことがたくさんあります。私自身のことを社員に理解してもらい、協力してもらいたいという思いから、この取り組みを始めました。


企業のモットーは「日々挑戦」です。挑戦には、大きいも小さいもありません。また、会社が考える挑戦と個々で考える挑戦は違います。一人ひとりの挑戦を集めれば、それは会社の大きな成長へとつながります。また、技術は進歩させていかないと、死んでいる状態と同じです。それは私たち人にも言えます。進歩がない限り、会社の成長は止まると考えています。

訪れた人が、また一緒に仕事をしたいと思えるようなをオフィスを目指している

エントランスにはたき火風のインテリアも

今後は企業価値を高めていく挑戦を


大洞:今後の展望について教えてください。


小南氏: 目標は、事業をさらに拡大して企業価値を高めていくことです。特に、クラウドPBXシステムやコールセンターソリューションの普及を進め、より多くの企業に私たちのサービスを利用していただきたいと考えています。


事業の成長以外に、資本提携なども数多ある手段の一つかもしれません。社員には、いつか責任のある仕事を背負う日に備え、目の前の数字だけではなく、決算書から全体の数字を見るように意識して欲しいと考えています。給料をもらうには、責任が伴い、ステップアップするごとにそれは大きくなるのです。もし社員各々がそのような立場になった時には、我々の文化を伝えてもらいたいです。


最終的には、プロディライトのサービスを通じて、お客様の業務効率を向上させ、ビジネスの成長を支援することが私たちの目標です。


上場を目指す後輩起業家に伝えたいことは、「失敗したら、あかん!」と「仲間を大切に」


西山:最後に、これから上場を目指す後輩起業家にメッセージをお願いします。


左:大洞 中央:小南社長 左: 西山

小南氏:関西で起業して上場する企業は、まだ少ないです。だからこそ、関西の上場企業の先輩方からは、意見をもらえる機会が多々あります。前を向いていれば、たいていのことは何とかなりますが、一つだけアドバイスをするとすれば、大企業とは違ってベンチャーは失敗をすると、倒産しか待ち受けていません。社員に対して、時にはイライラすることもあると思いますが、信用してついてきてくれる仲間を思っていれば、必ず助けてくれます。会社を立ち上げた時も上場した時も、いつも側にいてくれたのは社員でした。それは今でも感じていますし、一番の財産になると思います。


西山:本日はどうもありがとうございました!


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(取材を終えて)上場に向けた証券会社からの質問状を通して、企業の体制やガバナンスを見つめ直す過程があり、真の上場企業になっていくのだと感じました。予実管理や内部統制など、苦戦を強いられるタイミングでも社員が分裂することなく、一丸となれることがプロディライトの強みであり、小南社長のお人柄の表れでもあると感じました。


オフィスは華やかなエントランスやたき火のオブジェ、ガラス張りの会議室など、素敵なインテリアが目を引く空間でした。(事務局兼ライター大洞)

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