関西スタートアップレポートでご紹介している注目の起業家たち。今回は、株式会社Portableの代表取締役である小林氏にお話を伺いました。 取材・レポート:垣端 拓海(生態会事務局)、野澤 信孝(生態会プロボノ)
小林 真大 氏(株式会社Portable 代表取締役社長)
2002年京都府生まれ。龍谷大学付属平安高等学校を経て、京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)プロダクトデザイン学科クロステックデザインコースに進学、学内のアントレプレナーシップに関する講座を受講し、美大生のキャリアデザインに課題を感じサービスの構想を開始、創業。「リーンローンチパッド全国大会2023」(主催:スタートアップ・ブレイン株式会社)において優勝、賞金100万円を獲得。現在事業に集中するため休学中。
■立ち上げと事業展開 生態会プロボノ 野澤(以下、野澤): 今日は株式会社Portableの代表である小林さんにお話を伺います。立ち上げの経緯と、現在の事業について教えてください。
Portable 小林氏(以下、小林): ありがとうございます。当社は2023年4月に設立されました。Portableのビジョンは「若きクリエイターのためのインフラを構築すること」です。現在、3つの主なサービスを展開しています。1つ目が「Portableスキルマッチングサービス」です。これは、依頼を発注したい一般の方や企業と、主に美大生のクリエイターをマッチングするプラットフォームです。例えば、企業がロゴデザインを依頼したい場合、美大生が自分の作品を提案し、クライアントと直接やり取りができるようになっています。このサービスの特徴は、クリエイターとしてのスキルを持つ学生が、リアルなクライアントの依頼を通じて実績を積むことができる点です。
2つ目のサービスは「インターン紹介」です。これも美大生を対象にしており、企業とのインターンシッププログラムを提供しています。インターン先の企業は多岐にわたり、学生が実践的な経験を積むことができます。3つ目は「展示会の開催」で、これは美大生が自身の作品を発表する場を提供するものです。これら3つのサービスを通じて、学生が自己のスキルを高めるだけでなく、社会とのつながりを強化する機会を提供しています。
野澤: それは素晴らしいですね。具体的に、マッチングサービスではどのような依頼が多いのでしょうか?
小林: 主にロゴデザインやポスターデザインなどのビジュアル系の依頼が多いです。しかし、依頼内容は非常に多岐にわたっており、ウェブサイトのUI/UXデザインや、プロダクトデザイン、さらには映像制作まで幅広く対応しています。また、最近では「つぶやき発注」という新しい機能を導入しました。これは、クライアントが具体的な依頼内容を決めずに「なんとなくこんな感じのデザインが欲しい」といった曖昧なオーダーを出し、それに対して複数の学生が提案を行うという仕組みです。このような柔軟な対応ができることが、Portableの強みの一つです。
■クライアントのニーズとコミュニケーションの質 野澤: サービスの立ち上げ当初にはどのような苦労がありましたか?
小林: 立ち上げ当初、私たちはクライアントとの初めての実験的な取引で大きな失敗を経験しました。具体的には、依頼内容の煩雑さやクライアントの求めるものを理解しきれていなかったために、納品物が期待にそぐわない結果になってしまったのです。この失敗を通じて、私たちは「クライアントが何を求めているのか」をしっかりと把握する重要性を学びました。
生態会 垣端(以下、垣端): その失敗をどのようにして克服されたのでしょうか?
小林: まず、クライアントとのコミュニケーションの質を向上させるために、依頼内容の確認プロセスを細かくしました。また、学生たちにもより多くのデザイン案を提示するよう指導しました。最初は3案しか提示しなかったため、クライアントの期待と合致しないことが多かったのですが、より多くの選択肢を提供することで、クライアントの要望に応えることができるようになりました。また、依頼の流れを学生に対して分かりやすくガイドするシステムを導入し、依頼の受け方や対応の仕方を自然に学べるような仕組みを作りました。
野澤: なるほど、それは非常に実践的なアプローチですね。現在の事業の割合について教えてください。
小林: 現在のところ、マッチングサービスが全体の8割を占めており、最も重要なサービスです。残りの2割がインターン紹介と展示会の開催で、これらも徐々に注目を集めています。インターン紹介は企業側、学生側のいずれからも評価が高く、学生が即戦力としてのスキルを磨く機会を提供できています。展示会の開催については、学生のクリエイティブな作品を発表する場として、学校や企業との連携を深めています。
視認性が高いPortableのホームページ(画像をクリックでHPへリンク)
垣端: 今後の展開について、具体的な計画をお聞かせいただけますか?
小林: 海外展開も視野に入れており、特にアジア市場でのクリエイティブな需要に応えるサービスを提供したいと考えています。
リーンローンチパッド全国大会2023で最優秀賞を獲得
野澤: 資金調達についてはどのように考えていますか?
小林: 現在エンジェル投資家からの調達を目指しており、資金はサービスの開発費用やエンジニア、デザイナーの人件費に充てる予定です。エクイティファイナンスも考えていますが、現在は借入を中心に運営しています。
野澤: どのようなリソースが今最も必要ですか?
小林: 今最も必要としているリソースは、クリエイティブな人材です。特に、エンジニアとデザイナーの採用を強化したいと考えています。また、マーケティングの専門家も求めています。
野澤: ありがとうございました。今後のPortable社の成長が非常に楽しみです。
小林: こちらこそ、ありがとうございます。私たちの取り組みが、学生たちの成長と社会への貢献につながることを願っています。
株式会社Portableの取材を通じて、若きクリエイターたちを支援する情熱と革新性を強く感じました。Portableは「スキルマッチングサービス」を通じて、学生が実社会でスキルを磨き、報酬を得られる新しいプラットフォームを提供しています。これは、学生と企業や個人を結びつけ、実践的な学びの場を創出するものです。
代表の小林氏の話から、学生の可能性を最大限に引き出すという思いが伝わってきました。今後はフリーランスプラットフォームの立ち上げや海外進出も計画しており、その成長に期待が高まります。Portableの今後の展開がどのようにクリエイティブ業界に新しい価値をもたらすのか、とても楽しみです。(生態会プロボノ 野澤 信孝)
Comments