生態会は、「関西の起業エコシステムを可視化し、コミュニティの発展に寄与する」ことを目指しています。スタートアップはもとより、スタートアップを生み育てる、シェアオフィスや大学にも取材しています。
2021年4月2日、起業プラザひょうごにお邪魔しました。こちらは、「起業」を通して夢を実現していく方々を応援することを目的に、起業の場や交流機能を備えた拠点として2017年10月に誕生しました。2020年9月には、三井住友銀行と連携し同行神戸本部ビル2階に、起業プラザひょうご(愛称「キップ」(KiP))としてリニューアルオープンされています。
レポート:生態会ボランティア 富田彩葉 (同行者:西山、近藤、田代、雑喉)
インタビューに協力いただいたのは、起業プラザひょうごを業務委託で運営されているNPO法人コミュニティリンクの中西雅幸さん(以下、中西)。取材に不慣れな私にもとても優しく接して下さいました。
生態会 富田(以下、富田):最初に、事業概要について確認させていただいてもよろしいでしょうか。
コミュニティリンク 中西さん(以下、中西):はい。起業プラザひょうごは、2017年に三ノ宮駅の東隣りにあるサンパル6階にオープンしたのが始まりでした。
当時、自治体が主導で、大規模なコワーキングスペースやシェアオフィスを開設することは珍しかったため、全国的に注目してもらえました。オープンしてから約2年が経ち、利用人数が伸びてスタートアップ等の起業家コミュニティが育まれていく状況でしたが、サンパルが三宮駅前の再整備事業によって取り壊しが決まっていたため、起業プラザひょうごは移転先を探していました。そこで、三井住友銀行さんに良いご縁により神戸本部ビル2階に移設が決定し、2020年9月にリニューアルオープンしました。
表に看板が三つかかっています。その中の一つに「hoops link kobe(フープス リンク コウベ)」があります。これは、三井住友フィナンシャルグループのオープンイノベーション拠点として、2007年から東京の渋谷に開設されている「hoops link tokyo(フープス リンク トウキョウ)」の神戸拠点です。起業プラザひょうごと同じ場所にあるので、神戸の起業や地元企業のオープンイノベーション創出を目指して一体運営をしています。
そして、もう一つ。「UNOPS(ユノップス)」という看板がかかっています。エリアマップにある真ん中が、「UNOPS GIC JAPAN(ユノップス ジーアイシー ジャパン)」です。
国内外からスタートアップを集積・育成し、国連が活動するフィールドへのマッチングや実証実験に結び付けて、SDGsを達成するためのイノベーション創出を目指すインキュベーション施設です。
ユニコーン企業を神戸から輩出していこうということで、ユニコーンのオブジェを飾っていたり、立場や性別などに関係なく活発にアイデアを出そうという想いを込めて、最後の晩餐をイメージしたアートを壁に描いたり、絵にも一つ一つ意味を持たせています。
ソフト面ですが、最近は、新規事業を生み出すために「チャレンジを共有すること」「チャレンジする人の発掘」を目的に、イベントの開催に力を入れています。
2021年3月末時点で、約110名の会員の方が登録されていて、業種は、アプリやシステム開発、WEBやデザイン制作、コンサルタントやアパレル等、幅広くご利用いただいています。GovtechやEdtech、バイオ系のスタートアップもいます。
ここの特徴として、社会課題解決を目指しているスタートアップが比較的多いです。起業を目指しておられる方の相談も沢山あります。起業プラザひょうごとしては、「将来の夢を目指していくために起業することは良いことですが、やりがいや楽しいことばかりではなく、その分苦しみもありますよ」と伝えています。男女比は、男性が7割弱、女性が3割ほどいらっしゃいます。年齢層としては、40歳代前半が中心になっているのですが、最近は学生起業や30歳台の方が増えてきています。利用されている方は、やはり神戸の方、通勤圏内の方が多いですかね。
富田:この辺りって、シェアオフィスはたくさんありますか。
中西:はい。ありますね。
富田:他社との違いや、強みについて教えてください。
中西:うちの場合は、起業に興味のある人や、創業まもない起業家の支援に力を入れています。スモールオフィスの利用は17部屋しかありませんので、「創業10年以内」「契約更新は1年間ずつ」「最長5年まで」と入居ルールを定めています。
生態会 田代(以下、田代):起業家同士のつながりが、今は難しいと思うのですが、実際にマッチングが行われるような仕組みを行われていますか。
中西:会員と僕たちスタッフや、会員同士のコミュニティづくりを進めていくために、「コミュニケーター」という役割のスタッフが、コミュニティ育成に力を入れて行っています。コロナ禍でなかなかリアル開催のイベントができていませんが、イベント予定があるときはイベント参加を呼び掛けたり、ランチや休憩時を見計らって会話するなど、少しずつではありますが交流の機会を作っています。それ以外にも、スラックなどでオンラインコミュニティをどう作っていくか等を考えています。
生態会 近藤(以下、近藤):起業プラザひょうごは、専門家とつなげるとおっしゃられましたが、どのようにしているのでしょうか?また、実際に起業プラザひょうごで生まれた、コラボレーションはありますか。
中西:コミュニケーターが、どんな相談があるのかを事前に聞いて、専門家を紹介しています。ニッチな相談などは、会員さんから専門家や知り合いを紹介してもらうことも時々あります。
会員さん同士で相性の良い業種もあるんですよ。例えば、フロントデザインをやっているような会員さんと、エンジニアリングが得意な会員さんと一緒にシステム開発などの企画をして、民間企業に提案するようなことがありました。
富田:現状の課題や今後の夢、目指すことについて教えていただけますか。
中西:課題というか、起業プラザひょうごのコミュニティが蛸壺化(たこつぼか)しないように気を付けています。起業プラザひょうごの運営で大切にしていることとしては、起業家同士のコミュニティ育成はもちろんですが、それに加えて先輩起業家や地元の企業、創業支援機関など、起業プラザひょうご内にとどまらず、多方面に連携を広げながら沢山の人が行き交い・交流できる場にすることです。みんなで「場」を高め合うような循環ができれば、より一層、事業が加速したり新しい事業が生まれるきっかけが増えて、兵庫・神戸の経済活性に繋がると信じています。
富田:最後に、起業家へのメッセージをお願いします。
中西:「チャレンジしたいことや思い描く将来像があると思うのですが、その目標に向かって進んでいくときに、「起業」という選択も1つに入れてみてください。起業プラザひょうごでは、新たな気づきやインプットを得る機会となるイベントやセミナーを開催しています。気軽に問い合わせてみてください。起業プラザひょうごのコーディネーターとともに、夢や目標に向かって一緒に頑張りましょう!」
「夢があるなら起業してみたらいいけど、その分苦しみはある」と中西さんは仰いました。特に昨今は、コロナウイルスによって社会環境も大きく変化しており、起業をするうえで抱く不安は計り知れないと思います。そんな中、夢をつかむために一歩踏み出す勇気と、苦しみを乗り越える情熱は、これからを生きる起業家にとってとても大切なことなのだと、インタビューを通して感じました。
(ライター・富田 彩葉)
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[コワーキングスペース]基本会費:¥5,500/月 or ドロップイン:¥550/時 or \1,650/日 ※会員登録後、すぐにご利用可能。
[ワーキングデスク] 基本会費:¥2,750/月×利用人数 + ワーキングデスク料金:\5,500/月~\8,250/月 ※お申し込み後、面談の実施。 [スモールオフィス]基本会費:¥2,750/月×利用人数 + スモールオフィス料金:¥3,300/月×㎡(相当)※お申し込み後、面談の実施。
*内容は変更の可能性があります。詳細はサイトをご覧いただくか、起業プラザひょうごにお問い合わせください。
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