2021年3月25日(木)に、生態会イベント「NPO運営の成功の秘訣とは!?認定NPO法人D×P理事長今井紀明氏セミナー&メンタリング」が開催されました。(オンライン・オフライン両開催)
NPO法人生態会は、関西の起業エコシステムの可視化を目指して、2018年11月より活動をしています。関西中の意欲あるスタートアップの取材や、イベント開催、起業相談の場を提供しています。
今回は、人脈なしの状態から、寄付型のNPO法人運営で約7,800万円の収益、毎年事業収益10%アップを達成されるまでに育てられた、認定NPO法人D×P(ディーピー)理事長今井紀明氏にご登壇いただきました。D×Pは、通信制の高校生を支援する事業をされており、多くの高校生を支えています。
この度の登壇では、今井氏がなぜ現在のNPO事業に取り組まれたのか、どのように事業規模を拡大させてきたのか、それまでの苦労について、経営者としてのご経験からお話をいただくことで、現在事業されている方やこれから起業したいという方の指針になると考え、本イベントを企画しました。
また、イベント後半にはピッチイベントが開催され、応募のあった方によるビジネスプランのピッチプレゼンに対して、今井氏によるフィードバックが行われました。
レポート : 奥田 菖斗(生態会 学生ボランティア)
第一部では、今井氏によるセミナー・質疑応答が1時間ほど行われました。
ご自身のキャリアからNPO事業における経営の秘訣、参加者からの鋭い質問など、盛りだくさんの内容をお話ししていただきました。
国や企業のできないことをする、それが寄付型NPO事業
NPO事業の中でも非常に難易度が高いと言われる寄付型のNPO。寄付型NPOとして、売り上げを上げるだけでなく、国を変える政策提言、世論形成、事業のマネタイズ等々を発信していく必要があります。
「国や企業のできないことをする、それが寄付型NPO事業の定義だと考えます」
そういった理念を常に持ち続け、国や企業のできない事業を展開してきたからこそ、D×Pは多くの支援者を集め、事業に成功しています。
また、この考え方が、今井氏の寄付型のNPO運営にこだわる理由なのだそうです。
当たり前だが、寄付型事業を行うには、寄付されるような事業を展開する必要がある。そういった前提を大切にする重要性を学ぶことができました。
今井氏の事業でも、多くの自治体や企業、さらには漫画「ちはやふる」の原作者末次由紀氏といった著名人まで、延べ1300人ほどのサポーターがついていることに驚かされました。
寄付を集める上で必須な3要素
・寄付が必要な事業か
・情報公開(SNSやウェブ上)をしているか
・寄付のお願いをしているか
今井氏はこの3要素が、寄付を集める上で重要なことであると述べます。また寄付という枠組みだけでなく、営利団体の資金を集めるという観点でも重要だと言います。
寄付が必要な事業でなければ、支援されることはない。それが、国や企業ができないことをやることにも繋がってくるのだそう。
何にお金を使っているのか、何をしているのか。これらを情報公開で隅々まで明確にすることが重要だと今井氏は言います。確かに、得体のしれない団体を支援しようとは、誰も思いません。
出会った人に自信を持って、寄付をお願いできるか。この行動を怠るNPOが多いと言います。寄付するサポーターは、一緒に事業を作っていく仲間です。また、サポーターがいなければ事業は回りません。
これらの要素は、至極当たり前だと感じる部分が多くあります。しかし、こうした基本を忠実に突き詰め、実行していくからこそ、多くの寄付が集まる組織を作ることができるのだと感心させられました。
子どもたちは可能性の塊である
今井氏がD×Pの事業に取り組んだ背景として、ご自身の壮絶な経験が関係しています。高校生の時にイラクで人質となり、日本に帰国後、待ち構えていた苛烈な状況が原因で、対人恐怖症、パニック障害、引きこもり、PTSDを発症するという経験です。
この経験があったからこそ、様々な環境が原因で人や仕事につながれない10代の人達が、活躍できる社会にしていきたいという想いで起業したと言います。
この事業を通し、多くの子どもたちと関わる中で、子どもたちは私達が想像もしない方向へと変化していくことに気付かれたそうです。
だからこそ、私達大人が子どもたちに対して、限界をつくってはならないと強く心掛けていると言います。
今井氏の根底にある信念や考え方。このぶれない強い想いが、多くの支援者を集め、今井氏の経営に対する理念を作り上げているのだと感じました。
第二部では三名の方からピッチプレゼンが行われ、今井氏よる強化改善点をフィードバックいただきました。
事業を始めた想いから、事業に対する厳しいコメントに、登壇者はもちろん、参加者も満足している様子でした。
イベントを振り返って
今井氏の、「子どもたちは可能性の塊である」という言葉の重さにとても感心させられました。私たちが、普段の生活をしていれば直面しないであろう高校生の現実に向き合い、その現実を解決するため、子どもたちにセーフティーネットを構築する。この事業は、国や企業にはできず、NPOしかできない事業だからこそ、多くの支援を得ることができているのだと感じました。
多くの支援者を集め、SNS発信で子どもたちの拠り所となりつつある「D×P」。その可能性は大きく、今後どういった展開を見せていくのか、注目していきたいと思いました。
生態会では、今後も毎月、スタートアップに役立つセミナーを開催していきます。
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