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京大生エンジニアと事業開発!80&Company

更新日:2020年4月1日

関西を拠点に活動するユニークな起業家に迫るこの企画。今回は株式会社80&Company代表の堀池広樹さんです。

前列中央が代表の堀池広樹さん

京都大学薬学部に入学するも、在学中に起業し、中退。学習塾を運営したり、日本のゲームの面白さを世界に発信するために海外法人を設立したりするなどいくつかの経験を経て、2018年10月に株式会社80&Companyを設立。AIなどITの最先端を学ぶ京都大学の学生エンジニアとともに、どのように社会にアプローチしようとしているのか、展望を伺いました。

取材・レポート:池田奈帆美(中小企業診断士・生態会事務局)


 

池田:堀池さんが京都大学のすぐ近くに新しい会社を設立されたと聞き、次は何に挑戦されようとしているのかをお聞きしようと思って来ました。


株式会社80&Company 代表 堀池広樹氏(以下堀池): 昨年はしばらく東京に行っていたのですが、その間に、東京と、京都を含む地方の格差を目の当たりにしました。東大の優秀な学生はすでに引く手数多ですし、東京に本社を持つ大手企業はすでにAI活用をガンガン進めています。その一方で、優秀でも機会の与えられていない京大生は大勢いて、技術に投資できていない企業もまだまだあります。それなら、京大生とコラボして、まだまだ発掘余地の大きい関西でAIなどのITを活用したビジネスを展開しようと思ったんです。


池田:「優秀な学生とビジネスをしよう」「まだ手垢のついていない関西で新しい市場を開拓しよう」と考えるのって、まさにベンチャーマインドですね。




堀池: 京大で情報学を学ぶ学生は、当然ですが、ものすごく優秀です。最先端の情報を持っているにも関わらず、人件費は社会人より安い。それに、学生だったらアルバイト制にできるので固定費で悩む必要もない。売上が読みにくいスタートアップには、もってこいだと思いました。また、京大は副代表の岡本と僕の母校でもあるし、事業を始めた原点でもあるから、京都での事業のお作法も何となく分かる。こうした経験と、企業とのコネクションと、優秀な学生エンジニアをかけ合わせたら、絶対おもしろいビジネスができると思ったんです。


池田:具体的には、どんなビジネスモデルなのでしょうか?


堀池:主な収益は、受託型新規事業開発です。第一弾として、株式会社グラッドキューブというデジタルマーケティングの会社と協働して、2019年12月にAI競馬というサービスをローンチしました。京大と東大の競馬サークルを巻き込み、膨大なデータをもとに、馬そのものの強みはもちろん、調教師や騎手情報、コースや天気などあらゆる変動要素を分析して、着順予想や穴馬情報を提供しています。数学に長けたエンジニアと競馬を愛する京大生・東大生がそれぞれの頭脳を掛け合わせて出すAI予想で、新しい競馬体験ができると思います。


池田:数字という無機質な結果に、コアなファンだけが知るドラマを掛け合わせることで、競馬を愛する人のもとへ、本当に知りたい情報になって届くというのは夢がありますね。


堀池: 僕たちの強みは、そこだと思うんです。単に、依頼主が求めるシステムを開発するだけなら他にもできる企業は沢山ありますが、そのシステムを使ってどのようなビジネスを展開するのか、場合によってはデータサイエンス以外の専門家を巻き込むことで明らかにする。そうすると、その体験で喜んでくれる人のポイントがよりシャープになり、それによって新しい事業開発の芽が発見できる。結局データはツールであって、僕がやりたいのは「新規事業開発」なんです。新しい事業を起こすためにはネットワーク(=人とのつながり)がとても重要。グラッドキューブさんの「競馬をもっと楽しめるサービスを作りたい」という構想に対しても、京大・東大の競馬サークルを巻き込むという発想と実行力を評価していただきました。


池田:ほかには、どのような活動をされているのですか?


堀池:アイフル株式会社にデータを提供していただき、 京都大学の構内でハッカソンを企画運営し、2019年は3月と12月の2回開催しました (主催はみやこキャピタル)。 個人からの融資申込のサンプルデータを解析して信用リスクを予測するのですが、アイフルさんから与えられた「契約件数を減らさず、利益を最大化できる基準を構築する」というお題は、とてもリアルでビジネスに直結する内容だったので、学生たちもビジネスの面白さを疑似体験できたと思います。アイフルさんにも、学生の優秀さを実感して頂ける機会になりましたし、学生と企業の出会いの機会になったと好評価でした。

池田:確かに、自分たちの知見がビジネスにどう役立つのかを実感できると、新たな角度から学ぶ意欲が高まりますよね。ご協力いただいた企業様にも、社会貢献による企業イメージ向上のほかに、採用精度の向上など、複合的なメリットが多く提供できそう。こうした「場を創る」のも堀池さんの得意分野だと思いますが、これまでの取り組みを踏まえて、今後のビジョンを教えて下さい。


堀池: 京大前に「TECH STUDIO KYOTO」を作ることができたので、ここをハッカソンや企業とのオープンイノベーションの拠点として確立していきたいなと思っています。アイフルさんとWin-Winの実績を作れたので、こうした取引をもっと多くの企業と行っていきたいです。その上で、将来的には大阪大学や東北大学の近くにも「TECH STUDIO OSAKA」や「TECH STUDIO TOHOKU」を作って、優秀な学生エンジニアが集い、地方企業とのオープンイノベーションがどんどん生まれる環境を作りたいと思っています。


池田:日本のオープンイノベーションは進まないと言われて長いですが、着実に芽が育っていることを実感しました。頑張ってください。


 

取材を終えて。池田より

自社事業の他に、6社ほどベンチャー企業の顧問をされている堀池さん。「社会人じゃないとできない」という既存の枠組みを取っ払い、「地方企業にはムリ」という固定概念も破って、仲間と共に新しいことに突き進む姿は頼もしい限りです。「こんなデータベースがあればもっと面白い事業ができるかも」という構想がある新規事業担当者は、一度会ってみられることをオススメします。行動力と提案力を持つ起業家と共に、新しい視点で新規事業を立ち上げられるかもしれません。



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